塩害とは?原因・メカニズム・対策【コンクリート技士試験対策】

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塩害とは、鉄筋コンクリート中の塩化物イオン濃度が限界濃度\((1.2kg/m^3)\)を超えることで、鉄筋の不動体被膜を破壊し、腐食を進行させる現象です。

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メカニズム

通常、鉄筋表面の不動体被膜はコンクリート内のアルカリにより保持されています。

しかし塩化物イオンは鉄筋の不動体被膜を破壊する性質を持っており、濃度が高くなると鉄筋の電気化学的な腐食を促進させてしまいます。

このときの鉄筋の腐食反応は、鉄分Feが電子を奪われることでFe +やFeOとなる酸化反応です。

一度腐食し始めると、コンクリートと鉄筋の電位差が増加することでどんどん腐食しやすい状態になっていきます。

さらに腐食後の鉄筋の膨張(2〜3倍)によりコンクリートにひび割れが生じた場合、酸素や水の供給による腐食促進が加算されます。

塩化物イオンの侵入経路

塩化物イオンの侵入経路は大きく2つあります。

1つは内在塩化物イオンと呼ばれる、コンクリートの練混ぜ時に混入する塩化物イオンです。

コンクリートの受入れ検査により\(0.3kg/m^3\)まで許容されており、その初期濃度が基本たして存在しています。

詳細は後述の対策の項目でお話します。

2つ目は外来塩化物イオンで、コンクリートのひび割れやジャンカから侵入するケースです。

塩化物イオンは高い水溶性を有しており、水に溶けた塩化物イオンはひび割れの細い隙間でも容易に侵入してきます。

特に海岸構造物は塩分濃度の高い海水の飛沫を受けるため、塩害対策が欠かせません。

これはあくまでも飛沫帯の話であり、常に海水中にある構造物については酸素の供給が不足するため鉄筋の腐食が発生しにくいです。

塩化物イオン拡散係数

塩化物イオン拡散係数とは、コンクリート内部において塩化物イオンの拡散しやすさを表す指標です。

コンクリート組織が密であるほど拡散しにくく、塩化物イオン拡散係数は小さな値となります。

すなわち、W/Cを小さくしてコンクリートを緻密化することで侵入した塩化物イオンの拡散を抑制し、塩害の発生を遅らせることが可能です。

対策

塩害はコンクリートの耐久性を低下させる有名所なので、対策も既にたくさん考えられています。

水セメント比W/Cを低減する

配合を調整による塩害対策としては、水セメント比を小さくする対策があります。

水セメント比を小さくすることで、セメントがぎっしりと詰まった緻密なコンクリートになり、塩化物イオンの侵入する隙間を少なくできます。

コンクリート標準示方書では塩化物イオンに関して、鋼材腐食限界濃度を下記の通り規定しています。

普通ポルトランドセメント:\(C_{lim}=-3.0W/C+3.4(kg/m^3)\)

高炉B・フライアッシュB種:\(C_{lim}=-2.6W/C+3.1(kg/m^3)\)

低熱・早強ポルトランドセメント:\(C_{lim}=-2.2W/C+2.6(kg/m^3)\)

シリカフュームを用いた場合:\(C_{lim}=1.20(kg/m^3)\)

※ただし、W/C=0.30~0.55

このことからも水セメント比W/Cを小さくする対策の有効性が確認できますね。

練混ぜ時の内在塩化物イオンを低減

レディミクストコンクリート中の塩化物イオン濃度は通常は\(0.3kg/m^3\)以下、購入者の合意により\(0.6kg/m^3\)以下に規定されています。

塩害リスクの高い構造物では基本的な規定である\(0.3kg/m^3\)を上限とし、できる限り低く抑えるようにします。

かぶりを大きくとる

鉄筋のかぶりを大きく取ることにより、塩化物イオンが鉄筋に到達するのを予防できます。

塩害環境において最小かぶり50mmの場合、耐久設計基準強度は、普通ポルトランドセメント:\(36N/mm^2\)、高炉セメントB種:\(33N/mm^2\)です。

エポキシ樹脂塗装鉄筋の採用

エポキシ樹脂を塗膜することで遮蔽効果により鉄筋腐食物質の侵入を遮断・抑制するほうほうです 。

ステンレス鉄筋の使用も可能で、JISではSUS316、SUS304、SUS410の3種類があります。

高炉スラグ微粉末の使用

海水による腐食は、コンクリート中の水酸化カルシウムが消費されてエトリンガイトという膨張性物質を生成するために生じます。

高炉スラグ微粉末は、ポルトランドセメントの使用量を減少させると同時に、コンクリート中の水酸化カルシウムと反応して硬化する潜在的水硬性を有しています。

同様にフライアッシュやシリカフュームも水酸化カルシウムを消費するため塩害対策として有効です。

表面保護工法

コンクリート表面に保護層を形成して外部からの二酸化炭素および塩化物イオンの侵入を遮断・抑制する工法で、新設時に予防保全の考え方を取り入れた設計として採用されます。

電気防食工法

電気防食工法とは、腐食した鉄筋を陰極、コンクリート表面を陽極として電流を継続的に流すことで、鉄筋の電位をマイナス方向に変化させて鋼材の電気化学的な腐食を抑制する工法です。

脱塩工法

コンクリート表面に電解質溶液と陽極剤からなる仮設陽極を設置し、陰極となる内部鉄筋に一定期間電流を流すことで、電気泳動の原理でコンクリート中の塩化物イオンをコンクリート外に抽出する工法です。

 

以上今回は塩害とその対策をご紹介しました。

中性化、凍結融解などの腐食反応とセットで覚えておくと、現場で素早く対策を講じることができますよ。