マスコンクリートとは、ダムや橋桁など大量のセメント量を必要とするコンクリート構造物を指します。
セメント量が多いことに起因した破壊や耐力悪化が発生してしまうため、マスコンクリートと分類することで注意を促進しています。
定義
マスコンクリートの具体的な定義は、スラブなら80〜100cm厚、壁なら50cm厚以上のものとされています。
ただし、マスコンクリートの基本概念は温度応力によりコンクリート硬化体に著しい影響を与える構造物に対するリスク管理を促すことであり、薄い壁や体積の小さな構造物であっても温度応力が問題となる場合にはマスコンクリートとして扱う必要があります。
温度ひび割れリスクの増大
マスコンクリートの最大の問題は、セメントの水和反応に伴う温度応力の増加です。
セメントが硬化する過程で行う水和反応は発熱を伴う反応であり、大きなコンクリート部材ではコンクリートが密な内部の温度上昇量と、表層部の温度上昇量の差が大きいです。
そのため、内部が大きく膨張するのに外部は拘束されている状態になり、コンクリート表面にひび割れが発生してしまいます。
対策
マスコンクリートの温度ひび割れは昔から問題とされており、そのため有効な対策が既にいくつも考案されています。
温度ひび割れ対策の基本方針として、
1.内部の温度増加量の低減
2.表面の温めて内部との温度差を低減
3.ひび割れを許容しても大丈夫な構造にする
の3つが挙げられます。
内部温度増加量の低減
材料の冷却
内部温度を下げるために、まずコンクリート自体を冷やすことが手っ取り早いですよね?
練混ぜ前の材料を冷やすことで、練混ぜ後のコンクリートの温度低下が可能です。
コンクリートの温度を1℃下げるためには、セメントなら8℃、水なら4℃、骨材は2℃だけ温度を下げる必要があります。
プラントもしくはアジテータ車内で練混ぜ中のコンクリートに-196℃の液体窒素を投入することで冷却する「液体窒素クーリング工法(プレクーリング工法)」もあります。
混和材の使用
コンクリート内部の温度上昇の主は、コンクリート硬化過程での水和反応に伴う発熱です。
ポゾラン反応により緻密化するフライアッシュや膨張材を混和することで、水和反応に依存する割合を減少させることができます。
ブロック割の縮小
特にダムコンクリートでは、打設面積が広いため、一度の打設高さを低くするとコンクリート量が大きく減少し、総温度応力を減少させることができます。
打設階数が増えるため工程とも相談ですが、一度の打設ブロックを小さくすることで、セメント量の減少→水和反応の減少→温度応力の減少に繋がります。
表面温度との差を低減
表面温度を内部温度に近づけることで温度ひび割れを低減する方法です。
加熱はNG
表面を直接温めてしまうと、表層部のコンクリートが内部よりも先に硬化し、返って拘束を強めてひび割れを促進します。
断熱型枠の使用
温度を強制的に増加させるのはNGですが、断熱材を用いることで外部気温による温度低下を軽減し、水和反応に伴う内側からの温度上昇を利用して表面温度を上昇させることができます。
ひび割れを許容する場合
ここまでに紹介した内外の温度差を減らす対策を行ったとしても温度ひび割れは発生するものです。
そこで、ひび割れが発生しても使用性が損なわれないように設計することが多いです。
ひび割れ誘発目地の設置
ひび割れ誘発目地とは、コンクリート構造物に一定の間隔(一般にコンクリート高さの1~2倍)で挿入する目地で、設置箇所にひび割れが発生するように誘導するものです。
外観を損いたくない箇所や外部から塩化物が侵入しやすい箇所を避けて設置することでひび割れが発生したときのリスクを減少させ、構造物を守ります。
以上、マスコンクリートの概要とマスコンクリートにおける最大の課題である温度ひび割れ対策をご紹介しました。
近年増加している大規模な構造物を施工する際にはますコンクリートとしての扱いが必要になってきます。
これからの土木を支える方々はぜひ覚えていってください。