ミドルサードとは?条件と計算公式|ダム・プレストレストコンクリートの安定照査

スポンサーリンク
スポンサーリンク

ミドルサードとは、外力の合力が部材断面中央から\(\frac{d}{3}\)の範囲であれば部材端部に引張応力が発生しないとする理論です。

ミドルサードは梁部材やダム堤体の応力計算で用いられます。

スポンサーリンク

公式

ミドルサードの公式は対象構造物(梁、ダム)によって異なります。
順にご紹介します。

プレストレスを受ける梁のミドルサード公式

梁のミドルサード解説図

梁部材でミドルサードを使用するのは、プレストレストコンクリートが定着位置で軸圧縮力を受ける場合で、公式は次式です。
$$b\leq{\frac{a}{6}}$$

ここで、b:偏心、a:部材高さです。

軸力がコンクリート部材中立軸から一定値以上外れてしまうと、端部に発生する引張応力によってコンクリートにひび割れが発生してしまいます。

導出

梁端部の引張応力はN/A-M/Zで計算できます。

軸圧縮力によって発生する曲げモーメントMは、軸力と偏心(中立軸と軸力載荷位置の差)の積で求められます。

この引張応力が0以下であればいいので、単位奥行き(1m)と仮定すると、
$$\frac{N}{A}-\frac{M}{Z}\leq{0}$$

$$\frac{P}{1*a}-\frac{P\times{b}}{\frac{1\times{a^2}}{6}}\leq{0}$$

これを計算すると公式を導出できます。
$$b\leq{\frac{a}{6}}$$

公式だけ見ると意味不明ですが、導出してみると案外基本的な計算で事足りるものだとわかります。

重力式ダムにおけるミドルサード公式

ダムのミドルサード解説図

ダムの中でも重力式ダムは、ダム堤体の自重によって水圧を支える構造で、その応力状態が重要になります。

ダム堤体の上流側に鉛直引張応力が発生し、ダム堤体が微小に浮き上がった場合、水が侵入して堤体に揚圧力が作用し、さらなる浮き上がり、ダム堤体の転倒に繋がります。

ダム堤体に作用する外力の合力がミドルサードを満たすことはダム堤体内に引張応力が発生しないことを意味し、転倒に対して安全であるとみなします。

重力式ダムのミドルサード公式は次式です。
$$a\geq{h\sqrt{\frac{γ_w}{γ}}}$$

※\(γ_w\):水の単位体積重量、γ:ダム堤体の単位体積重量

導出

ミドルサード式の導出は梁と同様なので省略して、ミドルサードを満たすa,hが公式によって求められることを証明します。

ダム堤体縦断面を三角形とすると、重心は高さ方向にも流下方向にも1/3の位置です。

ミドルサード範囲内の限界点との角度\(θ\)は\(tanθ=\frac{h/3}{a/3}=\frac{h}{a}\)です。

水圧および堤体自重の合力の方向がこの角度以内であればミドルサードに入るため、次式が成り立ちます。
$$tanθ’\leq{tanθ}$$
$$\frac{\frac{γ_wh^2}{2}}{W}\leq{\frac{a}{h}}$$
$$\frac{γ_wh^2}{2W}\leq{\frac{a}{h}}$$
\(W=\frac{ah}{2}γ\)より、
$$\frac{γ_wh^2}{ahγ}\leq{\frac{a}{h}}$$
$$\frac{γ_wh^2}{γ}\leq{a^2}$$
$$\therefore{a\geq{h\sqrt{\frac{γ_w}{γ}}}}$$

 

以上から公式を導出できました。

ミドルサード条件はダム以外の基礎の安定など、引張応力を発生させたくない構造物であれば何にでも使用します。

複雑な構造物にも対応できるよう、ぜひ導出できるようにするか、このページを保存しておくのがオススメです。