技術士の定義、技術士の行動規則を定めたものが技術者倫理綱領です。
技術士二次試験では、技術者倫理綱領にある技術士の在り方にふさわしいかどうかを評価されます。
簡単にいうと、技術士とは?をまとめたものが技術者倫理綱領です。
技術士倫理綱領は技術士会のHPから確認できますが、ここでは技術士資格試験に合格するために重要なポイントだけを抜粋して解説していきます。
技術士二次試験における技術者倫理綱領の立ち位置
筆記試験では以下のポイントに基づいた問題形式となっていますので、技術者倫理綱領の概要を知っておくだけで十分ですが、口頭試験では技術者倫理綱領の内容を直接質問されますので、口頭試験の日までに暗記しておく必要があります。
技術者倫理綱領の内容(前文、10項目)は次の通りです。
技術士は、科学技術の利用が社会や環境に重大な影響を与えることを十分に認識し、業務の履行を通して安全で持続可能な社会の実現など、公益の確保に貢献する。
技術士は、広く信頼を得てその使命を全うするため、本倫理綱領を遵守し、品位の向上と技術の研鑚に努め、多角的・国際的な視点に立ちつつ、公正・誠実を旨として自律的に行動する。
- 安全・健康・福利の優先
- 持続可能な社会の実現
- 信用の保持
- 有能性の重視
- 真実性の確保
- 公正かつ誠実な履行
- 秘密情報の保護
- 法令等の遵守
- 相互の尊重
- 自己研鑽と人材育成
まず、前文については、丸暗記する必要はありませんが、筆記試験の段階から要点は押さえておき、口頭試験の段階までには全て言えるようにしておきましょう。
要点としては、科学技術が社会や環境に重大な影響を与え、それを適切な方向に使用するよう技術士は責任を持って行動すべきだということです。
先に10項目を理解すると、前文の内容がすっと理解しやすくなります。
10項目を順に解説していきます。
特に建設部門における解釈を述べていきます。このように解釈しておくと、理解がスムーズで口頭試験合格に大きく近づきます。
安全・健康・福利の優先
公衆の安全や健康のことで、つまり公益の優先です。
技術士は、無理なコスト圧縮など私欲に走らず、常に社会と利用者の利益を考えて行動しなければいけません。
持続可能な社会の実現
公益の優先を、より環境にフォーカスしたものです。
材料選定や転用計画等、環境負荷を最小限とする計画を選択し、持続可能な社会の実現を図ります。
信用の保持
技術士の信用がなくなると、環境や社会に大きな影響を与えうる科学技術を任せるべき人材が分からなくなってしまい、科学技術を悪用する人材に権利が渡ってしまう恐れがあります。
技術士は適正に科学技術を使用するという信用が技術士を技術士たらしめ、公益を守っているのです。
そのため、技術士は技術士全体の品位や信用を落とすような行動をしてはいけません。
具体的には、「技術士の範囲を落とす行動=技術士倫理綱領の違反」であり、公益の損害、秘密漏洩、法令違反などです。
有能性の重視
技術士の名称を使用する場合に、自身の専門分野を明示して、確信の持てる範囲で業務に取り組みます。
自身の詳しく無い範囲については他の適切な力量を持った技術士に助力を求めます。
つまり、技術士はその専門分野についてのみ技術士であり、他の分野については力不足であるということで、有能性を発揮できる自身の分野でのみ技術士の名称を使用するようにとのことです。
専門性の及ばない範囲で不確実な行動により公益を損ねないようにするもの、かつ技術士全体の信用を損ねないようにするものです。
真実性の重視
真実性とは、客観的なデータに基づいたという意味で、技術士は依頼者に対して、計算やモニタリング結果等に基づいて客観的に報告・説明を行い、改ざんや捏造を行ってはならないというものです。
また、技術士倫理綱領には、議論において専門知識の範囲内で意見を表明するともあります。
これは、専門性のないにも関わらずヤマカンで答えてはいけないという、有能性の重視に似た内容です。
公正かつ誠実な履行
技術士は公正な分析を行い、利益相反の事態はなるべく回避するよう努め、それらの情報を関係者に開示すること。法令はもとより、組織内の規則等を遵守すること。
トレードオフがステークホルダー間で利益相反の事態になるのはよくあることです。
その際、公正な立場で分析を行うこと、および情報を開示して公正な議論とすることが求められます。
公正でないということは、客観的分析に基づかない結論を提示することであり、技術士の信用失墜にも繋がるあるまじき行為です。
秘密情報の保護
秘密情報を許可なく外部に漏らさないということです。
秘密情報の漏洩は当事者と関係者に直接的に損害を与える重大な問題です。
ここで、秘密情報とは何か、知っていますか?
「秘密情報とは何を指しますか?」という口頭試験で問われる可能性がありますので、改めて確認しておきましょう。
秘密情報とは、当事者間で授受した一切の情報のことを指し、口頭、文書、電磁的記録、その他いかなる形態、媒体を含みます。
秘密情報の保護に関しては違反時には刑法に問われる可能性があり、懲役や罰金などの罰則があります。
法令等の遵守
法令を遵守しましょうというものです。
相互の尊重
相手の立場を尊重するものです。
まず、ともに働くものの安全、健康及び人権を守り尊重します。
また、公正で自由な競争に努め、他の技術者の名誉や権利を侵害してはいけません。
自己研鑽と人材育成
自己研鑽を継続し、技術士としての資質を向上させ、また後進の育成を行うものです。
基本的な技術力の向上はもとより、最新の技術力を身につけることで、より良いものを社会に提供できます。
後進育成についても同様で、社会に貢献する技術者を育成して社会にモノを提供していきます。
2000年に技術士法が改正され、自己研鑽(CPD)の項目が追加されました。
口頭試験の評価項目にも「継続研鑽」の項目があり、それだけ重要視されていることがわかります。
以上、今回は技術士倫理綱領についてまとめました。
技術士のあるべき姿を示したもので、10項目についてご自身の言葉で言い換えられるくらいにしっかり理解しておきましょう。