技術士二次試験 建設部門(土木) 難易度と合格率・合格基準、過去問の傾向、申込方法

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土木業界の社員が必要とする三大資格といえば、コンクリート技士、一級土木施工管理技士、技術士ですよね。その中でも技術士は最難関です。

ここ最近5年で技術士のニーズは爆発的に増大しており、多くの建設会社では管理職へ昇給するために技術士を必須とし、技術士取得を推進しています。今後2024年問題等の残業規制が強まると、時間外労働による給料が減少してしまいますので、残業時間に関わらず高い給料が貰える管理職への昇給が大きな意味を持つようになります。

超難関ではありますが、取得する価値が非常に大きい、それが技術士資格です。

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一次試験・二次試験とは

技術士試験には、「一次試験」と「二次試験」があります。

これは筆記試験、面接試験という意味ではなく、「技術士一次試験」と「技術士二次試験」という完全に別の試験になります。

技術士一次試験は、JABEE認定されている大学の土木学科に通っていれば、卒業時に自然と与えられる資格です。

中堅レベルの国公立大学であればJABBEE認定されていることが多く、むしろ難関大学と言われる旧帝大等ではJABEE認定がされていない場合が多いです。

技術士一次試験は、それほど難易度が高いわけでは無く、一般的な大学の講義レベルで抑えられる内容です。

一般に「技術士試験」と言われているのは技術士二次試験のことで、こちらの難易度が非常に高いです。

難易度・合格率

技術士の難易度は非常に高く、数年にわたって毎年受験して、ようやく合格というのが一般的です。

技術士建設部門の過去の合格者数はグラフの通りです。

2013年から2022年までの技術士受験者数と合格者数の推移

実際の受験者数

まず、申込者数に対して受験者数は7~8割程度であり、申込みだけして受験しない人が少なくありません。

これには2種類の人がいます。

  1. 会社から「受験しろ」と言われるから、とりあえず申込みだけした人
  2. 申込から受験までの間に転勤したり、受験日に現場で問題が発生してしまった人

一つ目の人は、そもそも受験する意志のない人です。

実は多いのがこのタイプで、特に30代後半~40代は、入社当時に技術士の受験を強制されていなかった世代であり、かつ既にある程度の職位にいるため、技術士を重要視していません。

お金もあるので受験料だけ払っておいて、会社からとやかく言われないようにしておこうという人が本当に多いんです。

二つ目のタイプの人は、受験意志はあったが、転勤や仕事の都合でやむなく受験を諦めた方々です。

こちらは気の毒ですが、建設業界で働く身であれば致し方ないですね。

こちらのタイプは割合としてはそこまで多くはありません。

申込後に住所が変更した場合も、技術士協会へ連絡すればすぐに郵送先を変更してくれますし、運営側も建設業界に寄り添ってくれています。

ただし、受験地の変更は難しいようですので、北海道から沖縄へ転勤になった場合も、受験日だけ飛行機で北海道へ戻って受験するというようなことになってしまうようですね。

難易度・合格率

グラフから分かる通り、合格率は6.3%~15.0%で推移しており、平均すると合格率は11.1%です。

技術士試験はボーダーライン方式なので、上位何割が合格というルールにはなっていないのですが、合格割合はおよそ一定になっていますね。

合格基準は、各科目で60%以上の得点があれば合格です。

技術士建設部門は選択科目ごとに分かれていますが、選択科目ごとに合格率の差はほとんど無く、いずれも10%前後となっています。

2022年度の選択科目ごとの合格率は以下の通りです。

  • 土質及び基礎 : 9%
  • 鋼構造及びコンクリート : 8%
  • 都市及び地方計画 : 13%
  • 河川、砂防及び海岸・海洋 : 12%
  • 港湾及び空港 : 9%
  • 電力土木 : 7%
  • 道路 : 10%
  • 鉄道 : 10%
  • トンネル : 12%
  • 施工計画、施工設備及び積算 : 8%
  • 建設環境 : 12%

技術士二次試験には筆記試験と口頭試験がありますが、筆記試験は1割しか合格しない、口頭試験はよほど間違ったことを答えない限りほぼ合格できると言われています。

技術士試験とは

技術士試験で測定されるのは建設技術者・土木技術者としての倫理的及び技術的な素養です。

具体的には以下の8項目であり、これらを「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」と呼びます。

  • 専門的学識
    専門分野の業務に必要な専門知識
  • 問題解決
    業務遂行上直面する複合的な問題に対する原因究明、解決策の合理的提案
  • マネジメント
    業務の計画、実行、検証、是正の過程における人員、設備、金銭、情報の適切配分
  • 評価
    業務遂行上の各段階における結果とその波及効果の適切な評価
  • コミュニケーション
    関係者間の明確かつ効果的な意思疎通
  • リーダーシップ
    豊かな現場感覚で多様な関係者間の利害を調整
  • 技術者倫理
    業務遂行にあたり、公衆の安全を最優先し、環境負荷を最小とする技術や工法を選定する
  • 継続研鑽
    技術を継続的に習得し、資質向上を図る

技術面の専門知識はもちろんのこと、現場を運営するためのマネジメントやコミュニケーションスキル、適切な現場運営のための技術者倫理、社会的教養についても求められます。

具体的にどのように試験されるかは後述する過去問の問題文を参照ください。

そこまで深くは要求されませんが、一般的な教養を身に着けておく必要があります。

受験資格・必要な実務経験年数

技術士の受験資格は、学歴によって受験に必要な経験年数が変わります。

まず、技術士一次試験に合格していないと二次試験は受験できません。

これは当然ですね。

ただし、前述した通り、JABEE認定された大学の建設学科を卒業していれば技術士一次試験を合格したものとみなされ、直接二次試験を受験することができます。

技術士一次試験に合格する(JABEE認定される)ということは、技術士補となる資格を得たと言い換えることもできます。

その上で、一次試験合格者またはJABEE認定者(技術士補)が二次試験を受験するためには、以下の実務経験年数が必要になります。

  • 経路1:技術士補に登録後、技術士補として4年間以上にわたり技術士を補助している
  • 経路2:技術士補となる資格を有した日(一次試験合格またはJABEE認定日)以降、監督者の下で4年間以上にわたり専門職に従事している
  • 経路3:(技術士補となる資格取得前も含んで)7年間以上にわたり専門職に従事している

※上記は総合監理部門以外の受験要件です。総合監理部門とは、一般的な技術士試験後に受験できるもう一段階上の試験です。

最も早く技術士補の資格を得られるJABEE認定について考えても、卒業後に4年間以上の実務経験が必要になります。

ちなみにここには大学院の2年間も加えることができますので、その場合は会社での実務経験は2年間でOKです。

試験科目・日程・時間

技術士二次試験は、筆記試験と口頭試験の2つが別日で開催されます。

筆記試験は7月中旬口頭試験は12月~翌年1月に実施されます。

筆記試験の試験科目と試験時間は次の通りです。

  • 必須科目Ⅰ:
    内容:建設部門全般的にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力、課題遂行能力
    形式:記述式 600字×3枚
    時間:2時間(10:00~12:00)
    配点:40点
  • 選択科目Ⅱ:
    内容:選択科目について、専門知識、応用能力
    形式:記述式 600字×3枚
    時間:選択科目Ⅲと合わせて3時間30分(13:00~16:30)
    配点:30点
  • 選択科目Ⅲ:
    内容:選択科目について、問題解決能力、課題遂行能力
    形式:記述式 600字×3枚
    時間:選択科目Ⅱと合わせて3時間30分(13:00~16:30)
    配点:30点

課題ⅠとⅢはおよそ同じ内容で、選択科目に関する専門知識というよりは、技術者倫理や社会的持続性の観点から建設部門、選択科目の業務がどのようにあるべきかを問うものです。

課題ⅡはⅠやⅢとは大きく異なり、専門知識そのものを問うものです。

過去問

課題Ⅰ~Ⅲの傾向と対策を、2023年の過去問をから読み解いていきましょう。

技術士二次試験の出題形式はここ数年コロコロと変化しているため、最新の2023年度の問題を確認します。

ここで、選択科目は例年最も受験者数が多い「施工計画、施工設備及び積算」の問題について書いていきます。

必須科目Ⅰ

必須科目Ⅰの問題文はこんな感じです。

実際の試験では、問題が2つ(Ⅰ-1・Ⅰ-2)提示され、好きな方を解けばOKです

必須科目Ⅰは600字×3枚の答案用紙を使います。

専門技術の試験ですので、どうしても馴染みのない分野で分からない問題の場合もあります。そのような悪い偶然により不合格となってしまうことのないよう、2つから選んでいいというルールになっています。

Ⅰ-1 (中略)地震災害に屈しない強靭な社会の構築を実現するための方策について、以下の問いに答えよ。

(1) 将来発生しうる巨大地震を想定して建築物、社会資本の整備事業及び都市の防災対策を進めるにあたり、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記した上で、課題の内容を示せ。

(2) 前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ

(3) 前問(2)で示した全ての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4) 前問(1)~(3)を業務として遂行するにあたり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要点・留意点を述べよ。

技術士協会HP

第1問で課題を抽出させ、次に解決策、その解決策実行時に新たに生じるリスクと対策が問われます。

第4問は内容に関連しつつも少し引いた視点の問いになっており、問1~3とは別物という感じです。

解答方法については別記事にて解説しますが、問題の流れは上記で掴んでおいてください。

選択科目Ⅱ

選択科目Ⅱは、Ⅱ-1、Ⅱ-2に分かれており、それぞれ複数題提示され、それぞれ1つずつ選んで解答します。

Ⅱ-1は600字×1枚、Ⅱ-2は600字×2枚の答案用紙を使います。

まず、Ⅱ-1の問題文は以下の通りです。

Ⅱ-1 以下から1設問を選び解答せよ。

Ⅱ-1-1 粘性土層で構成される軟弱地盤上の道路盛土工事で、特に対策を講じることなく道路下を横断するカルバートボックスを設ける場合に想定される変状について説明せよ。また、想定される変状への対策方法について2つ挙げて説明せよ。

Ⅱ-1-2 公共工事における監理技術者の職務について説明せよ。また、令和2年10月から施行された建設業法改正に伴う監理技術者の配置要件の変更点と、変更となった背景について説明せよ。

Ⅱ-1-3 BIM/CIMの概念について簡潔に説明せよ。また、建設工事の施工段階におけるBIM/CIMの活用事例を2つ挙げ、それぞれに関して期待される効果を具体的に述べよ。

Ⅱ-1-4 設計基準強度50~100N/mm2の高強度コンクリートの特徴を説明せよ。また、高強度コンクリートの打込み時、養生時の各段階における品質確保のための留意点について説明せよ。

技術士協会HP

選択科目Ⅱ-1は、専門知識を直接問う問題形式になっています。

受験者は土木業界に従事する方ですが、立場はそれぞれ違いますので、全員に平等にチャンスが訪れるよう、発注者側に馴染み深いテーマから、受注者側・施工者側の業務内容に近いものまで用意されています。

土質、コンクリート、契約、規則、最新技術、安全に関するテーマから出題される傾向にあり、特にコンクリートと土質はほぼ毎年出題されています。

選択科目Ⅱ-2の問題文は以下の通りで、実際にはⅡ-2-1とⅡ-2-2の2題が提示され、うち好きな方に解答します。

Ⅱ-2 以下から1設問を選び解答せよ。

Ⅱ-2-1 (中略)模式図のように、非出水期に延長70m分の既設護岸設備を撤去し、新たに護岸設備(直径900mmの鋼管矢板、高さ7mの場所打もたれ式擁壁)を新設し、河道を拡幅し河床を設計河床高まで掘下げる工事である。一般道から河川区域へのアクセスは確保されているものとして、本工事の担当責任者の立場で下記の内容について記述せよ。(中略)

(1) 本工事の特性を踏まえて、仮設計画を立案する上で検討すべき事項を2つ挙げ、技術的側面からその内容を説明せよ

(2) 本工事の工程遅延のリスクを1つ挙げ、PDCAサイクルにおける計画段階で考慮すべき事項、検証段階での具体的方策、及び是正段階での具体的方策についてそれぞれ述べよ。

(3) 本工事の施工中に重機の油圧シリンダーが破損し、漏れた油が河川に流出した。この対応に当たり、本工事の担当責任者として発揮すべきリーダーシップについて、複数の利害関係者を列記し、それぞれの具体的調整内容について述べよ

令和5年度技術士二次試験Ⅱ-1課題模式図
技術士協会HP

選択科目Ⅱ-2は、専門知識の応用やマネジメント、リーダーシップを問う問題形式になっています。

第1問は課題や検討すべき事項、第2問で考えうるリスクに対する対処計画と実行、第3問で実際に問題が生じた際の対応について問うています。

選択問題Ⅱ-2にはⅡ-2-1とⅡ-2-2の2つの問題が提示されますが、その違いは工事種別や問いの観点です。

具体的には以下のような違いがあります。

(1) :工事種別(土留め掘削工事/橋梁工事)

(2) :観点(工程/安全)

(3) :観点(リーダーシップ/マネジメント)

選択科目Ⅲ

選択科目Ⅲはテーマとしては必須科目Ⅰと類似しています。

問題文は次の通りで、うち1題に解答します。

Ⅲ 以下から1設問を選び解答せよ。

Ⅲ-1 近年の気候変動の影響により自然災害が激甚化・頻発化している状況下において、地球温暖化対策が喫緊の課題となっている。(中略)グリーン社会の実現に向けたカーボンニュートラルの取組みが不可欠となっている。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1) 構造物の新たな整備から供用後までの各過程におけるカーボンニュートラルへの取組みを推進するにあたり、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記した上で、課題の内容を示せ。

(2) 前問(1)で示した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。

(3) 前問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ

Ⅲ-2 建設業では、令和6年4月から改正労働基準法による時間外労働の上限規制が適用される。(中略)週休2日の質の向上に取り組むことが重要である。このような状況を踏まえ、建設業就業者数に限りがあることや対策に費やすことができる資金に制約があることを念頭に置いて、施工計画、施工設備及び積算分野の技術者として、以下の問いに答えよ。

(1) 建設現場での週休2日を確保するために、多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記した上で、その課題の内容を示せ。

(2) 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門用語を交えて示せ。

(3) 前問(2) で示した解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

技術士協会HP

選択科目Ⅲは、専門用語を踏まえつつ、広い視野で選択科目に対する課題と解決策を問い問題になっています。

問題形式は必須科目Ⅰとほぼ同じで、「専門用語を交えて」という部分が異なるだけです。

必須科目Ⅰは建設部門全般に関するもの、選択科目Ⅲは選択科目に関するテーマであるという点が異なります。

今回は「施工計画、施工設備及び積算」の問題文のため、「施工計画にあたって」どういう対応が必要かという問いになっています。

土質基礎であれば「地盤構造物の新設にあたって」等の制約が問題文中に与えられます。

ですが基本的には必須科目Ⅰと選択科目Ⅲは内容も同じものという認識でOKです。

答案用紙の枚数も同じですし、対策としてもほぼ同じような対策をすることになります。

応募方法

では、技術士二次試験にはどのように応募するのでしょうか?

応募時期

筆記試験が7月、口頭試験が12月~1月ですが、応募できる期間は4月上旬~4月中旬の2週間しかありません。

募集要項は3月末から入手可能ですが、それでも時間はほとんどありません。募集要項を確認してから準備していては間に合いませんので、提出物を事前に確認して、遅くとも2月末頃から準備しておくと安心です。

準備するもの

応募時に提出するもので、準備に時間がかかるものもあります。

以下の準備リストを参考に準備を進めておいてください。

  • 受験申込書
    募集開始後の対応
  • 実務経験証明書
    これまでの期間ごとの実務経歴を記載し、会社から証明を受ける必要があります。
    また、そのうち1つの期間を取り上げて業務の目的、立場と役割、業務内容、成果等を720字以内で記載します。これは口頭試験の際に参照されますので、しっかり作りこむ必要があり、教育指導者に添削を依頼して1か月ほどかけて作成する場合が多いです。早めから準備しておきましょう。
  • 顔写真
    証明写真機で事前に撮影しておきましょう
  • 受験手数料払込受付証明書
    募集開始後の対応
  • 技術士補となる資格を有することを証明する書類
    技術士一次試験を受験した方は合格証でOKです。
    JABEE認定者は指定された教育課程の修了証明書(大学から貰える)が必要になります。3~4月は年度末のため大学の証明書発行機関が混雑し、2週間以上要するケースもありますので、早めに申請しましょう
  • 監督者要件証明書、監督内容証明書
    これまでの実務経験について、各現場での教育責任者から署名(電子で可)・電話番号・メールアドレス、及び教育責任者自身の経歴書を貰う必要があります。事前に連絡して準備しておいてもらいましょう
  • 大学院の研究経歴証明書(実務経験に大学院の期間を含めたい場合)
    大学院の修了証明書でOK。早めに申請しておきましょう。

以上今回は技術士二次試験について、難易度・合格率、合格基準となるボーダーラインを説明するとともに、実際の過去問を用いて問題文の傾向を解説しました。

また、応募に向けて準備するものについても紹介しました。

各問題ごとの解説については別記事にて解説していますので、ぜひそちらもチェックしてみてください。