リーダーシップの定義
リーダーシップというと、ポジションとしてのリーダーであることを想像しがちですが、技術士としてのリーダーシップは、立場を問わず、利害関係を調整して業務遂行に努めることを意味します。
技術士分科会から公式に明記されている定義は以下のとおりです。
想定質問
想定される質問形式は以下の通りです。
- 「リーダーシップを発揮した経験教えてください」
- 「業務詳細の中で、リーダーシップを発揮した経験はありますか?」
- 「多様な利害関係者を調整した経験を教えてください」
- 「発注者との関係調整をした経験はありますか?」
1は、リーダーシップを発揮した経験を聞く最も一般的な質問形式です。
2では、業務詳細に記載した業務の中に限定してリーダーシップ発揮経験を聞いています。リーダーシップに限らず、マネジメントや評価に関しても、業務詳細に記載した内容について聞かれることが多いので、業務詳細に関連づけたエピソードを一つ用意しておくのがおすすめです。
3は1の言い換えですね。リーダーシップのことを聞いているんだと理解できるかがポイントとなっています。リーダーシップの定義を改めて確認しておきましょう。
4は発注者との関係に限定した質問です。限定される対象は基本的に発注者です。発注者関連のエピソードを準備していけば問題ありません。無い場合には正直に発注者との関係がないことを伝えた上で、他の関係者との調整経験を述べればOKです。
解答のコツ
技術士二次試験の口頭試験でリーダーシップについて問われた際、どのように解答するのが良いのでしょうか?
質問としては、「あなたが業務においてリーダーシップを発揮した経験を教えてください」と聞かれます。
それでは解答のポイントを整理してみていきましょう。
具体的な体験で語れ
ほとんどの方は、リーダーシップを発揮した経験として、抽象的な表現をしがちです。
これは、リーダーシップの定義を理解していないことが原因です。
抽象的な表現はその場だけで伝えた気になっていることが多く、聞き手側も「よく考えてみると理解できなかった」ということが多いです。
また、自身でも理解していない内容を伝えるのは不可能ですよね?
技術士に求められるコンピテンシーとしてのリーダーシップの定義を再確認しておきましょう。
発注者や外部業者の調整経験を述べる
リーダーシップの定義にある通り、解答には「多様な関係者の利害」を調整したことを含める必要があります。
社内の人間だけだと利害が一致しているため、利害調整というにはふさわしくありませんし、外部と直接やりとりした経験がないと、どうしても経験不足に感じてしまいます。
技術士の受験資格に一定の実務経験が必要なことを踏まえると、技術士には豊富な経験が求められており、経験不足は技術士にはふさわしくありません。
特に発注者との関わりについて述べられるとベストですが、外注業者や下請業者等とのやり取りの中で利害調整をした経験を話すようにしましょう。
トレードオフを見つける
相反する利害とは、トレードオフと言い換えることができます。
ご自身の経験の中で、トレードオフの関係があったことを思い出してみて下さい。
そして、それをどのように解決したんだっけなと思い出すと、まさにそれこそがリーダーシップといえる経験だったりします。
例えば、竣工を早めるために人員を増やしたい発注者側と、人工を増やす予算はないという施工者側がいた場合、ここに工期と予算のトレードオフが発生しています。
この場合には、何かしらの工夫によって、両者の合意できる妥協点を見つけて利害調整を行なっているはずです。
その利害調整の工夫こそがリーダーシップといえます。
このように、トレードオフから考えると、ご自身のリーダーシップを発揮した経験を簡単に探すことができます。
「業務」の認識を狭くしてみる
建設業は専門的な職種ですので、役割によってはリーダーシップを発揮してプロジェクト全体を進めたといえる経験が無い方も多いでしょう。
そのように、リーダーシップを発揮した経験が思い当たらないという方は、「業務」の認識を狭くしてみてください。
「業務遂行にあたり」というのは何も「プロジェクト全体の進行にあたり」と捉えなくてよいです。
自身の担当する土工事の範囲だけの話でもいいですし、そのために下請業者の業務調整や監督者の検査に向けた説明等を行って業務が円滑に進むように調整をしたということがリーダーシップといえるのです。
口頭試験で問われるのは技術士としてのコンピテンシーであり、担当した案件の大きさや技術力を測るものではありません。
そのため、決して背伸びせず、たとえ小さな業務範囲であっても、的確にリーダーシップを発揮した経験を伝えることができれば十分に合格できます。
解答例文
口頭試験の解答は個別の経験に基づくものなので、解答テンプレートとまでは言えませんが、以下のような文章構成に沿って答えるとよいです。
まず、品質とコストという2つの指標について、品質を重視する発注者側と、コストを重視する施工者側に分かれています。つまり、品質とコストがトレードオフの関係にあり、受発注者間で利害が対立している状況です。
それに対し、両者の利害が一致する工期という指標を追加することで、落とし所を見つける材料を用意するという工夫があります。
その上で、検討ケース分けを行うことで3つの指標の増減傾向を見える化し、説明性を高めています。
利害調整のための工夫が分かりやすく、しっかりとリーダーシップをアピールできています。
また、上記は、「多様な視点から課題解決を図る」という点で、技術士に求められるコンピテンシーのうちの「問題解決」の能力もアピールできています。
実際に解答として使う場合には、「業務詳細に記載の業務について」というところを、「スラブの配筋量設定において」など、ご自身の担当業務の範囲に絞って答えることで経験と紐づけることができます。
まとめ
技術士二次試験の口頭試験におけるリーダーシップに関する解答方法について、ポイントをおさらいしましょう。
- 範囲を限定された質問の場合もあるが、業務詳細に記載した業務の中で発揮したリーダーシップと、発注者との利害調整の経験について準備しておけばOK
- 経験が無い場合は正直に答え、別の範囲で発揮したリーダーシップについて話す
- リーダーシップの定義を理解し、抽象的な文を避け、自身の経験に基づいて具体的に述べる
- 発注者や下請業者など、外部の関係者との利害調整経験を述べる
- 経験エピソードが思いつかない場合は、「業務」の範囲を狭く考えて、自身の担当業務に絞って考えるとよい。背伸びする必要はない
以上、今回は技術士二次試験の口頭試験で問われるリーダーシップについて解説しました。
その他にも口頭試験ではマネジメント、評価、コミュニケーションに加え、技術者倫理と継続研鑽も評価対象となっています。
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