乾燥収縮に比べていまいちイメージしにくいのが自己収縮ですよね。
今日は自己収縮を徹底的に理解していきましょう。
定義
自己収縮とは、セメントと水と水和反応に伴う巨視的な体積減少によってひび割れが生じる現象です。
メカニズム
コンクリートの水和反応によって水を消費、自己乾燥してコンクリート中の毛細管中の水が減少することで、メニスカスが生じ、毛細管張力がコンクリートに引張応力を与えるためひび割れが生じます。
もう少し簡単に説明します。
メニスカスとは、毛細管の水が足りなくなった時に負圧が生じる現象のことで、吸ってないストローに飲み物が入ってるあの感じです。
まあメニスカスは覚えなくても良いのですが、そうなったときに毛細管内は負圧により張力が発生します。
コンクリートは局所的な引張応力に対してとても弱いので、ひび割れが生じてしまいます。
自己収縮が発生しやすい条件
自己収縮はのどが乾いたようなイメージなので、コンクリート内に水分が足りない状況で発生しやすくなります。
具体的には水セメント比の小さい高流動コンクリートやダムコンクリートでよく発生します。
自己収縮対策・抑制方法
水セメント比の増加
自己収縮を低減させるためには、セメントに十分な水を供給してやればいいです。
単純に考えると水セメント比を大きくすればいいですが、水セメント比は強度に直結するため、安易に増減させない方が良いです。
混和材。ただし高炉スラグはNG
普通ポルトランドセメントの配合調整でどうにもならないときは混和材で大抵なんとかなります。
フライアッシュや石灰微粉末は自己収縮低減効果があります。
ここで、高炉スラグ微粉末の使用には注意しましょう。
粉末度の大きい高炉スラグ微粉末で、かつ置換率が高い場合、乾燥収縮等の抑制には効果がありますが、自己収縮に関してはむしろ増大させてしまうことがあります。
高流動コンクリートの自己収縮対策
水セメント比が20~40%と小さく、自己収縮が発生しやすい高流動コンクリートへの対策ですが、フライアッシュとシリカフュームを併用することにより大きな自己収縮低減効果が期待できます。
実際のところ自己収縮は問題にならない!?
以上ご紹介したように、自己収縮に関しては混和材を加えるくらいしか大した対策はありません。
なぜかというと、実際には自己収縮が問題となる場面がほとんど無いためです。
高流動コンクリート等を除いた一般的なコンクリートでは、自己収縮よりも乾燥収縮が卓越し、その対策がメインになります。
問題にならないがために情報も少なく、イメージしにくくなってしまっているのが自己収縮なのです。
以上、自己収縮に関するご紹介でした。
イメージの難しい自己収縮という概念ですが、実施工においてはともかく、試験関係では頻出ですので知識として覚えておくのがオススメです。