鋼矢板壁工法と地中連続壁工法の違いとは?施工方法と留意点

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止水性を有する土留工法として、鋼矢板工法と地中連続壁工法があります。

今回はこの2つの止水性を有する土留壁工法について解説していきます。

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鋼矢板工法

鋼矢板工法とは、シートパイルと呼ばれる鋼製の矢板を振動・圧入して土留壁を構築する工法です。

なぜ鋼矢板工法は止水性を有するのか

シートパイルは端部に継ぎ手を有するU形の鋼材です。

隣り合う鋼矢板の継ぎ手部は噛み合う構造になっており、噛み合わせて嵌合溶接・モルタル注入して止水性を持たせます。

この点が、親杭に横矢板を挿入する親杭横矢板工法と違って止水性を確保できる所以です。

鋼矢板の限界圧入深さ

鋼矢板は圧入もしくは振動工法により挿入しますが、圧入深さが深くなるほど周囲の地盤による鉛直上向きの摩擦力が働き、圧入できなくなります。

一般に振動工法による圧入限界深さは20m前後です。

それを超える深さの止水性が必要な場合には、薬液注入工法を鋼矢板下端以深に採用します。

20m以深の土留が必要な場合には、次に紹介する地中連続壁工法を適用します。

地中連続壁工法

地中連続壁工法とは、地中に連続したセメント系硬化体を構築することで土留壁の役割を担わせる工法です。

柱列式ソイルセメント工法と、場所打ち工法の大きく2種類あります。

柱列式ソイルセメント工法

柱列式ソイルセメント工法とは、攪拌翼を有する攪拌機械により原位置土とセメントミルクを攪拌混合し、これにH鋼等の芯材を挿入した柱状体をラップさせながら布状に構築することで土留壁とする工法です。

※ラップ: 柱状体が接する、もしくは重なるように施工することで連続した一体の壁を構築します。

柱状体が接するように配置する接円配置と、重なるように配置するラップ配置があります。

攪拌による構築は不確定要素があり、柱状体の径が前後する可能性があります。

そのため、接円配置の場合に接続できない恐れがあり、止水性が確保できません。

止水性を必要とする土留壁の場合には、ラップ配置として、止水性を確実にします。

また、等厚式ソイルセメント地中連続壁工法もあります。

こちらは柱状体を連続させるのではなく、平たいカッターを地中に挿入して、移動しながら攪拌混合を行うことで、直線的な壁を構築できる工法です。

曲線施工ができない点と、方向転換時に一度引き抜く必要があることから方向転換の多い土留構造の場合には工期が長くなる点に留意が必要です。

柱列式、等厚式どちらもソイルセメント壁であることから、後述するRC連続壁よりも土留壁の剛性が低くなってしまいます。

大きな応力が発生する土留壁や変形を抑えたい場合にはRC連続壁の採用を検討してみましょう。

場所打ち工法

カッターやオーガーで地盤を掘削した後、鉄筋かご(壁鉄筋のように主筋を帯筋で囲んだカゴ状の鉄筋)を建て込み、コンクリートを流し込んで鉄筋コンクリート硬化体を構築し、これを土留壁とする工法です。

掘削時は溝内をベントナイト安定液で満たすことで溝壁が崩壊して溝が埋まることを防止します。これを溝壁防護工と呼びます。

溝壁の安定の観点から、一度の掘削は延長方向に最大6m前後までとすることが多いです。

掘削幅(土留壁厚)は開削工事開始後の土留壁の発生応力や変形量を勘定して適切に設定します。

RC連続壁は単位体積重量が大きいため、壁厚が厚いほど自重が増加して土留壁の根入れ長を長くする必要が出てきますので、過大な壁厚としないようにします。

鉄筋かご建て込みの際に大型クレーンが必要となり、溝に隣接して施工スペースを確保する必要があります。

 

以上今回は止水性を有する土留壁工法ということで、鋼矢板工法と地中連続壁工法についてまとめてみました。

中規模以上の開削工事であれば掘削床付け位置が地下水位以深となり、土留壁に止水性が要求されますので、止水性を有する土留工法は非常に重要です。

特に鋼矢板(シートパイル)の嵌合継手の止水方法等は、ぜひ作業状況をイメージして合わせて覚えておいてください。