重力式コンクリートダムの特徴と安定計算方法!現役土木技術者が解説します

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重力式コンクリートダムとは、ダム堤体の自重によって水を堰き止めるダム形式です。

重力式ダム、グラビティダムとも呼ばれます。

スイスのグランドディクサーンスダムが世界最大で、その高さは285mにも及びます。

環境問題や住民からの批判で話題となった中国の三峡ダムや日本の八ッ場ダムが有名所です。

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適用可能範囲が狭い

重力式コンクリートダムは、構造が簡単なため古くから建設されていますが、大量のコンクリートが必要なことと良好な基礎地盤にしか適用できないことから近年は減少傾向です。

工事費用が高い

近年は比較的少ないコンクリート量で経済的な施工が可能なCSGダム(cemented sand and gravel dam)が人気です。

安定照査の計算方法

重力式コンクリートダムの安定照査の基本は3つです。

1.ダム堤体の転倒

2.ダム堤体の滑り

3.ダム堤体の圧縮破壊

最後の圧縮破壊が問題になることはまずありませんので、1と2の照査がメインになります。

堤体の転倒安定計算

堤体は重心から鉛直下向きに自重を、水平方向に静水圧を受けます。

これらの合力により、堤体上流側に引張応力が発生していなければ安定と判断します。

重力式コンクリートダムに作用する荷重図(自重と水圧)

堤体上流側に引張応力が発生して堤体が微小でも浮くと、隙間に水が侵入し、堤体に上向きの揚圧力が発生し、さらに安定性が失われてしまいます。

上流側に引張応力が発生しないことを、ミドルサード法により確認します。

ミドルサードとは、ダム底辺を三等分したときの中央一つの範囲内に合力が収まっていれば引張応力は発生しないとするものです。

堤体の滑り安定計算

堤体の滑り安定は次式のせん断摩擦安全率\(f_s\)が4以上なら安定とします。

$$f_s=\frac{τ_0l+fV}{H}\geq4$$

\(τ_0\):ダム堤体のせん断強度、\(f\):ダム堤体の摩擦係数、\(V\):作用する垂直力、\(H\):ダム下面に作用するせん断力。

水圧によるせん断力に対して堤体底面の摩擦力と堤体自身のせん断強度で抵抗するという式で、イメージしやすいですね。

 

以上、重力式コンクリートダムの概要および設計方法をまとめましたが、施工にあたってはマスコンクリートとして慎重に取り扱わなければいけません。