密閉式シールド工法には、土圧式シールドと泥水式シールドの2つがあります。
さらに土圧式シールドは土圧シールド工法と泥土圧シールド工法に細分されます。
土圧式は土圧で、泥水式は泥水で切羽を安定させます。
ここで、泥土圧と泥水式が同じようなイメージで混同してしまう人が多いです。
今回はその違いをご紹介します。
切羽の安定手法
最も大きな違いは切羽安定手法です。
そもそも泥土圧シールドへ土圧式シールド工法の一つであり、土圧で切羽を安定させます。
掘削土に添加材を攪拌して塑性流動化させ、チャンバー内に溜め、地山より少しだけ大きな圧力をかけることで切羽が崩れないようにします。
※塑性流動化とは、土をドロドロした状態にさせて土の自立性を低減させ、切羽への側圧を増加させるものです。
一方、泥水式シールドはその中の通り、液圧で切羽を安定させます。
送泥管から泥水をチャンバー内に送り込んで圧力をかけ、液圧で切羽を安定させます。
この「土か水」かがポイントになってきます。
排泥方法
土圧シールドはスクリューコンベアやベルトコンベアで排泥します。
泥水式シールドは泥水のためコンベア排泥が不可能なため、排泥管を設置します。
有毒ガスのリスク
地山が有毒ガスを含んでいた場合、土圧シールドのスクリューコンベア、ベルトコンベア排泥だと作業空間にガスが溢れてしまいます。
泥水式シールドであれば作業空間にガスが侵入する危険はありません。
カッターの形状
切羽安定手法の違いにより、泥水式シールドは送り込んだ泥水を利用するため、カッターは切羽と分離する面板式です。
土圧式シールドは掘削土をチャンバー内に取り込むためにスポーク型です。
スポーク型とは、自転車の車輪や船の操縦桿のように輪っかに放射状の部材がついている形状を指します。
(奥村建設HP,JIMTHPより)
必要なヤードの広さ
排泥された土砂は、土を一般廃棄物、泥土を産業廃棄物として処理します。
土圧シールドの排泥は泥土であり、泥と土に分ければいいので比較的狭いヤードで事足ります。
泥水式シールドは、泥水が排泥されるため、水と泥土を分ける一次処理、泥と土砂に分ける二次処理が必要です。
そのため、広い作業ヤードを必要とします。
適用可能地盤
適用可能な地山種別はほぼ同じで、緩い粘性土および礫以上の大きな地山には適用不可です。
また、泥水式の場合は透水性の高い地山において、水が逸散してしまい切羽を安定させられなくなります。
国内シェア
日本のシェアトップ2が泥土圧シールドと泥水式シールドです。
泥土圧シールドは国内の約70%を占めており、同じ土圧式である土圧シールド工法が約1%なのに対して非常に大きなシェアです。
一方、泥水式シールドは国内シェア2位で、約25%を占めます。
以上が土圧シールド工法と泥水式シールド工法の主な違いです。
実際施工の際には調べながら使うとして、基礎知識としては上記を知っておけば十分だと思います。