地盤改良とは、構造物の基礎となる地盤について支持力不足が懸念される場合や止水性の低い原地盤に対して、セメント系固化剤を撹拌することでセメントとソイル(原地盤の土砂)の複合体(改良体)を形成して補強する工法のことです。
地盤改良と一言に言っても種類も豊富ですし、固化剤の配合も自由でバラエティに富んでいます。
ここでは一般的にどの種類にも当てはまる、地盤改良の基本を解説します。
種類
一般的によく使う地盤改良工法には、大きく分けて3種類あります。
薬液注入工法、浅層改良(置換工法)、深層混合処理工法(噴射攪拌、機械攪拌)です。
それぞれ見ていきましょう。
薬液注入工法
薬液注入工法とは、主に止水性が問題となる場合に用いる工法で、開削トンネル施行時に土留壁を浸透して掘削部へ湧水するのを防ぐ場合などに使用します。
薬液注入工法は、地盤に注入管を挿入し、凝固特性を持つ薬液を地盤中に注入ます。
凝固作用によりサンドゲル(土中に薬液が浸透して硬化した固結物)を生成し、地盤の止水性を改善します。
地盤の一軸圧縮強度が\(10kN/m^2\)ほど増加しますが、その信頼性が保証されいないため、強度増加を期待して薬液注入工法を採用することは禁止されています。
浅層改良(置換工法)
浅層改良とは、軟弱地盤をより高強度の材料に置き換えることで支持力増加等を期待する工法です。
砕石や無筋コンクリートなどで置き換えることが多いです。
後で紹介する攪拌混合処理工法を浅層改良で採用する場合もあります。
この場合は、原地盤にセメント系固化剤を散布してバックホウで攪拌する方法が用いられます。
深層混合処理工法
深層混合処理工法とは、比較的深くまで地盤を改良する改良工法の呼び方で、攪拌方法によって機械攪拌工法、高圧噴射攪拌工法があります。
機械攪拌工法とは、GIコラム等の攪拌翼を持ったオーガーを地盤に挿入し、回転することで地盤と固化材を攪拌する工法です。
一方、高圧噴射攪拌工法とは、OPTジェットなどが有名ですが、土中に固化材を高圧で噴射することで、地盤を切り裂きながら固化材を浸透させる工法です。
地盤を切り裂いてから固化材が凝固するまでに一時的に地盤がゆるんでしまうため、既設構造物が近接している場合は沈下や転倒の危険があります。
改良体の形状
前述の改良工法によってできた原地盤と固化材の混合地盤を改良体と呼びます。
薬液注入工法や機械攪拌、高圧噴射攪拌工法では円柱状の改良体が形成され、置換工法では置換した形状(一般に手間の少ない矩形が多い)になります。
一般的には、円柱を重ねながら(ラップさせながら)施工することでブロック状の基礎を作っています。
円柱形の改良体間に隙間は、改良率という考え方で補完して設計を行います。
ポアソン比
改良体は原地盤を含んだものであるため、一概に地盤定数の設定が難しいですが、経験的に諸元を設定します。
ポアソン比に関しては、「地盤改良マニュアル」において、関東ローム等を含めて粘性度から砂質土まで改良した場合の実験値から、およそ0.19〜0.26との結果を得ています。
コンクリート構造物では一般的にポアソン比を0.2前後に設定しますので、なんとなく妥当な気がしますね。
単位体積重量
地盤改良体の単位体積重量は明言されていませんが、原地盤と同じ値を使うのが良さそうです。
言葉尻を濁しましたが、断言できない理由は、単位体積重量を断言している文献が無いためです。
ただ、地盤改良マニュアルの設計事例において、原地盤の単位体積重量を使用した設計例が記載されていることから判断しています。
設計基準強度
改良体の設計では転倒、せん断破壊、圧縮破壊等の照査を行いますが、その可否基準となるのが設計基準強度です。
改良体の設計基準強度\(f_c\)は改良体の一軸圧縮強度\(q_u\)と同じ値として推定できます。
$$f_c=q_u$$
改良後の一軸圧縮強度は、原地盤の砂質土・粘性土や強度によって大きくバラつくため、現地でテスト改良を行った結果の一軸圧縮強度を参考にして決定します。
改良体の設計指針でおよその一軸圧縮強度が規定されていますが、地盤は未解明なことが多い分野ですので、現地の土質でテストした値を使用するのがベストです。
以上今回は地盤改良体について、ポアソン比や単位体積重量、および設計基準強度の考え方を整理しました。
地盤改良は改良可能範囲や強度等の品質が原地盤によって大きく異なりますので、上記を基礎として身に着けつつも、現地での試験が必要だということを覚えておいてください。