コンクリートの劣化機構5種類と原因・対策(塩害、中性化、アルカリシリカ反応、凍結融解、化学的浸食)

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コンクリートの耐久性を著しく低下させる劣化機構は大きく5つあります。

1. 塩害

2. 中性化

3. アルカリシリカ反応

4. 凍結融解(凍害)

5. 化学的浸食

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塩害

塩害とは、コンクリート構造物内の塩化物イオン濃度が増加し、コンクリートおよび鉄筋の劣化(後述の変状)を促進する作用です。

塩害による変状

塩害が発生すると、下記の変状が生じます。

・鉄筋軸方向のひび割れ

・コンクリートの剥離

・さび汁

・コンクリートや鉄筋の断面欠損

塩害対策

コンクリート製造時には一定量の塩化物イオンが混入します。(内的要因)

また、供用中の硬化コンクリートは海水等塩害環境での曝露、凍結防止剤の散布等により外部から塩化物イオンが侵入します。(外的要因)

内的要因については、コンクリート標準示方書において、「現場到着時のコンクリートの塩化物イオン濃度を0.3kg/m3以下とする」よう規定されています。(購入者の許可を得た場合は0.6kg/m3以下)

特に海水の影響を受ける場合は、規定に関わらず、より塩化物イオン濃度を低く抑えるよう注意が必要です。

外的要因については、コンクリートのひび割れや空隙から侵入するため、ひび割れ対策や水セメント比を小さくすることによる水和反応の促進・コンクリートの緻密化により軽減できます。

コンクリート表面にエポキシ樹脂やポリマーセメントを塗布して塩化物イオン侵入を防止する「表面処理工法」も有効です。

塩害の補修工法

補修工法は2つです。

・電気防食工法

・断面修復工法

電気防食工法は、コンクリート表面をはつって内部鉄筋に片端子を接続、もう片方の端子をコンクリート表面に接続して腐食電流と逆の電流を流すことにより、鉄筋側のアノード反応を促進し、腐食を抑制します。

ただし、腐食電流の発生を抑制する工法であり、塩化物イオン濃度の低減や侵入防止、腐食鉄筋の断面積回復を図るものではなく、その点に関しては他工法の併用が必要であることに留意が必要です。

断面修復工法は、変状範囲のコンクリートおよび腐食鉄筋をはつった後、新しいコンクリートを打設し直す工法です。

こちらは腐食鉄筋の断面積の回復および塩化物濃度増加範囲のコンクリートを除去することが可能です。

一方で、既設・新設コンクリートの境界において美観を損ねるため、はつり範囲の選定に十分な注意が必要です。

中性化

中性化とは、コンクリート構造物の空隙(細孔)から二酸化炭素が侵入し、コンクリートのpHが一定値(およそ10程度)まで減少することを指します。

通常コンクリートはpHが12〜13程度であり、これにより鉄筋の酸化腐食反応を防止していますが、中性化することにより腐食反応が促進されてしまいます。

中性化による変状

中性化が発生すると下記の変状が発生します。

・鉄筋軸方向のひび割れ

・コンクリートの剥離

・鋼材の断面減少

中性化対策

中性化対策は下記の通りです。

・かぶりの確保

・適切な供用年数の設定

・湿潤状態の管理

・水結合比を小さくする

・フライアッシュの不使用

かぶりは外的要因が鉄筋に到達するのを防止する役割を持ちます。

十分なかぶりを確保することにより、中性化要因である二酸化炭素の侵入を抑制できます。

かぶりから中性化した深さを差し引いた残りの深さを「中性化残り」と呼び、中性化残りを10mm以上確保できていれば鉄筋は軽微な腐食に留まるとされています。

かぶりを多く取るほど中性化残りを長く確保することができます。

中性化深さは供用年数の平方根に比例します。

耐久性・劣化を考慮した供用年数を設定し、中性化深さが許容値を超える前に更新することが重要です。

二酸化炭素はコンクリートが乾燥しているほど侵入しやすくなります。

コンクリートを一定の湿潤状態に保つことで二酸化炭素の侵入を抑制することが可能です。

上記と同様の理由より、水結合比を小さくすることで密実なコンクリートが形成され、二酸化炭素の侵入を抑制することができます。

フライアッシュはポゾラン反応により膨張するゲルを生成しコンクリートを緻密化しますが、コンクリートの水和反応生成物が減少してpHが低下し、中性化を促進してしまいます。

フライアッシュや高炉スラグ微粉末の使用を控えることが中性化対策として有効です。

アルカリシリカ反応

アルカリシリカ反応とは、コンクリート中に含まれるアルカリ反応性骨材がコンクリート中のアルカリと長期にわたって反応し、膨張性のゲルを生成してひび割れ等の変状を発生させる反応です。

アルカリシリカ反応による変状

・膨張性のゲル生成

・亀甲状の膨張ひび割れ

・変色

前述の通り、アルカリシリカ反応により膨張性のゲルを生成します。

ゲルが膨張することによりコンクリートに引張力を発生させ、亀甲状のひび割れを生じさせます。

アルカリシリカゲルの漏出や硫酸イオン反応により、褐色から白色に変色し、景観上の不具合を生じます。

アルカリシリカ反応対策

アルカリシリカ反応への対策は下記のとおりです。

・止水・排水処理

・ひび割れ補修

・無害骨材の使用

アルカリシリカ反応は、十分なアルカリ金属イオン、骨材中の反応性シリカ、水分の3つが揃った時に発生し、その1つでも除去することができれば反応を防止することができます。

止水・排水処理により水分の供給を防止することで、上記条件を1つ除去することでアルカリシリカ反応を防止できます。

ひび割れ補修工法の採用も同様で、コンクリート外部から水が供給されるのを防止できます。

計画段階においては、モルタルバー法により無害と判定された骨材を使用したコンクリートとすることで、条件を1つ潰すことができ、アルカリシリカ反応防止に有効です。

凍結融解(凍害)

凍結融解作用(凍害)とは、寒冷地におけるコンクリート構造物について、細孔中の水分が凍結と融解を繰り返すことで、ひび割れ等の変状を生じる現象のことです。

水は氷よりも体積が大きく、融解の際に膨張し、コンクリートに引張力を発生させることでひび割れを発生させます。

凍害による変状

凍害による変状は下記の通りです。

・微細なひび割れ

・スケーリング

・ポップアウト

前述の通り、凍結融解に伴う水の体積変化により繰り返し引張力を受けたコンクリートには、微細なひび割れが発生します。

スケーリングとは、コンクリートの表面が剥離する現象のことで、剥離箇所でかぶりの減少・必要かぶりが取れなくなる等が起きることで鉄筋腐食を促進します。

ポップアウトとは、コンクリート表面が薄い皿状に剥がれ落ちる現象のことです。

凍害(凍結融解)対策

凍害対策として下記が有効です。

・AE剤の使用

・断面修復工法

AE剤を使用したAEコンクリートは、適切な空気泡を連行することで、凍結融解に伴う体積変化を吸収し、コンクリートに発生する引張力を低減できます。

また、単位水量を減少させる、水分が侵入する場所である細孔を少なくするためにコンクリートを緻密化する対策も有効です。

コンクリートの緻密化は、水セメント比の低減や混和材の使用と十分な湿潤養生期間の確保により実現可能です。

断面修復工法とは、コンクリートおよび鉄筋の劣化部分をはつり取った後、新たにコンクリートを打設する工法です。

化学的浸食

化学的浸食とは、コンクリートに外部から化学的物質(酸、アルカリ、塩類、油類、腐食性ガス)が侵入し、セメント硬化体を構成する水和生成物の変質や分解、結合力の欠如を引き起こす現象のことです。

プロセス概要

一部の化学物質(酸、油類、無機塩類、腐食性ガス、炭酸ガス)は、本来水に溶けにくいセメント水和物を可溶性物質に変えることで、コンクリートの多孔化、分解し、骨材の露出・脱落等の劣化を発生させます。

他方で、一部の化学物質(油類、塩類、アルカリ)は、コンクリート中の水和物と反応して膨張性物質を生成し、膨張圧によりひび割れや剥離を生じさせます。

酸類による浸食

酸は、コンクリート中の炭酸ガスと反応して二酸化炭素を生成しながら溶解します。

表面から内部へと徐々に浸食する反応で、表層部コンクリートの剥落→骨材露出・剥落を引き起こします。

アルカリによる浸食

基本的にコンクリートはアルカリ性を有し、アルカリへの抵抗力は強いです。

しかし、高濃度の水酸化ナトリウムには浸食されてしまい、膨張性物質の生成によるひび割れ発生等の劣化を生じます。

特に乾湿の繰り返し環境下では反応しやすいため注意が必要です。

塩類による浸食

硫酸塩による浸食が主流であり、セメント中の水酸化カルシウムと反応してニ水せっこうを生成→アルミン酸カルシウムと反応→エトリンガイトを生成→膨張圧によるひび割れ・剥離劣化を生じます。

油類による浸食

ここでいう油類とは、動植物油のように多くの遊離脂肪酸を含むものを指しています。(酸性物質を含まない鉱物油による浸食は弱い)

油類は、コンクリートの溶解によるコンクリートや骨材の剥落と、膨張性物質の生成によるひび割れ・剥離の両方を引き起こします。

腐食性ガスによる浸食

腐食性ガスとは、塩化水素、ふっ化水素、二酸化硫黄、硫化水素が含まれます。

塩化水素、ふっ化水素、二酸化硫黄は、水に溶けて酸を生成し、酸によりコンクリートを浸食します。

硫化水素は、2つの浸食プロセスを有します。

1つは、酸化されて硫黄酸化物となり、水に溶解して酸を生成し、酸によりコンクリートを浸食するプロセスです。

2つ目は、ガス状の硫化水素の場合に、水中に溶解して硫化水素イオンとなり、カルシウム化合物と反応してカルシウム塩を生成し、塩類によるコンクリート浸食を引き起こすプロセスです。

 

以上、今回は5つのコンクリートの劣化機構について解説致しました。

分かっているようでいて、その反応過程等は案外分かっていない方が多いです。

ぜひ覚えておいて、ひとステージ周りと差をつけてみてください。