通常、硬化コンクリート内はpH12以上の強アルカリを保っています。
中性化とは、コンクリートのひび割れ等から二酸化炭素が侵入することでコンクリート内部を中性化(pH11以下)させる現象のことです。
メカニズム
二酸化炭素CO2がコンクリート中の水酸化カルシウムCaOH2と炭酸化反応を起こし、炭酸カルシウムおよび水を生成します。
そうするとコンクリート中のOHが減少してアルカリ性が失われていきます。
中性化による被害とは
なぜ中性化が問題かというと、コンクリート内部の鉄筋は高アルカリ環境(pH12以上)では不動体被膜を形成していますが、pHが11以下になると不動体被膜は破壊され、鉄筋の腐食が進行するからです。
不動体被膜が破壊された鉄筋が腐食すると、腐食箇所の体積膨張圧によりコンクリートのひび割れが促進され、さらなる中性化を引き起こしたり、その他の劣化(塩害等)に繋がるおそれがあります。
また、一度中性化が進行すると鉄筋断面積の減少やコンクリートの剥落など、構造物としての機能が低下し、補修も手間がかかります。
二酸化炭素の侵入経路
中性化を引き起こす二酸化炭素は多くの場合、空気中の二酸化炭素がコンクリートのひび割れや空隙から侵入します。
人間含めて呼吸によって二酸化炭素を放出するものが多いため、広い空間で薄められる室外よりも、室内において二酸化炭素濃度が濃くなる傾向にあります。
ビルなどの構造物では、特に室内側のひび割れに注意が必要です。
一方で、室外においても中性化要因があり、自動車交通に伴う排気ガス(亜硫酸)および酸性雨等も原因になりえます。
中性化深さの計算公式
中性化深さは、コンクリートの含水比と水セメント比、外環境の二酸化炭素濃度、気温に影響されますが、基本的にはコンクリートが外気に触れている時間(材齢)の平方根に比例すると言われています。
中性化深さ\(D=A\sqrt{t}\)
ここで、Dは中性化深さ、tは材齢、Aは中性化速度係数です。
この中性化速度係数Aの中に含水比や気温などの影響が考慮されています。
$$A=K_w・K_c・K_{wc}・K_T・K_f$$
ここで、Kw、Kc、Kwc、Kγ、Kfはそれぞれ含水比、二酸化炭素濃度、水セメント比、温度、施工方法による中性化抑制に関係する係数です。
対策
水セメント比の低減
中性化対策として最も有効なのが、コンクリートを緻密にすることです。
中性化の原因となる二酸化炭素はコンクリート中の空隙を通るため、空隙の少ない緻密なコンクリートの方が中性化しにくくなります。
コンクリートを緻密にするとは、簡単に言えば水セメント比を低減することです。
そうすることでセメントが密に詰まったコンクリートになります。
混和材の使用
混和材による抵抗力付与も効果的です。
フライアッシュやシリカフュームは中性化抑制効果があります。
ただし、高炉スラグ微粉末は中性化を促進させてしまうことがあるので中性化リスクの高い構造物には高炉セメントは使用しないようにします。
水供給の抑止
中性化深さの公式から分かるように、中性化はある程度の湿度環境下で促進されます。
そのため、水の供給を遮断し、乾燥状態にすることで抑制することができます。
塗装などによる表面保護や欠損部の補修等により水の供給を遮断する対策が有効です。
中性化の補修方法
表面被覆工法
表面を被覆することで中性化をそれ以上深くしないようにする対策です。
ひび割れ注入工法も同様の効果があります。
再アルカリ化工法
コンクリートのアルカリ性を回復させることで中性化を除去する工法です。
既に腐食した鉄筋については別途処理しておく必要があります。
断面修復工法も同様の効果があります。
電気防食工法
鉄筋の腐食は電気化学的反応で、鉄筋中の鉄分Feが電子を奪われることでFe+やFeOに酸化される酸化反応です。
ひとたび電子が奪われると、コンクリートとの間に電位差が生じて鉄筋からどんどんと電子が奪われやすくなる腐食電流が流れてしまい、腐食が促進されます。
電気防食工法では、コンクリート表面を陽極、鉄筋を陰極として導線を繋いで電流を流すことで、鉄筋側に電子を供給して腐食電流を消滅させることができます。
以上、今回は中性化についてメカニズムから対策までご紹介しました。