まず、六価クロムとは、酸化数が6のクロム化合物のことです。
通常クロムは、クロム単体か三酸化クロムの形で地盤内に存在していますが、セメント系地盤改良の際、セメント中の六価クロムが地盤に溶出することがあります。
六価クロム溶出試験とは、溶出した六価クロム濃度を測定し、その影響をはかる試験です。
溶出メカニズム
セメントの原料には元々は三酸化クロムとしてクロムが存在しています。
そのままでは問題にならないのですが、セメントの生成過程における「焼成(しょうせい)」の際に、一部の三酸化クロムが酸化して六価クロムになります。
ただし、これがそのまま溶出するわけではなく、セメント系地盤改良を行った際のセメントの水和反応生成物に吸着され、本来であれば地盤に溶出する六価クロム濃度はごく微量です。
六価クロムが問題となるのは、腐食土やロームを地盤改良する場合です。
六価クロムと地盤の相性
通常は水和反応生成物によって吸着される六価クロムですが、対象地盤が腐食土やロームの場合、水和反応を阻害する性質を有しており、水和反応生成物量よりも六価格クロム溶出量が上回ることで地盤内の六価クロム濃度を増加させてしまいます。
基準値
地盤内の六価クロム濃度の規定値は、環境基準0.05mg/lです。
対策
六価クロム溶出はセメント系固化材と対象地盤との相性によって変化するため、事前に試験を行って相性のいい固化材を選択します。
もしくは、地盤改良という手段を変更する選択肢もあります。
建物の基礎杭として高圧噴射による改良杭を考えている場合は、鋼管杭に変更することで六価クロム溶出の心配は無くなります。
以上六価クロム溶出試験についてご紹介しました。
地盤改良は土木工事の基本で、どの現場でも適用の可能性があります。
また、近年の環境意識拡大に伴い規定が厳しくなっていますので、施工管理者にとっては今後とも重要な項目になります。