高炉スラグ微粉末とは、製鉄所の高炉から排出された溶融状態のスラグを高速の水や空気で急冷し、微細に粉砕したものです。
高炉スラグ微粉末はそのままでは硬化しませんが、セメントの水和反応によって生成する水酸化カルシウム等のアルカリ性物質および石膏の硫酸塩の刺激によって、水和・硬化する潜在水硬性を有しています。
種類
高炉スラグ微粉末は比表面積によって4種類に分類されます。
Ex.高炉スラグ微粉末3000と呼びます
種類 | 3000 | 4000 | 6000 | 8000 | |
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密度\((g/cm3)\) | 2.80以上 | ||||
比表面積\((cm2/g)\) | 2750~3500 | 3500~5000 | 5000~7000 | 7000~10000 | |
活性度指数(%) | 材齢7日 | 55~ | 75~ | 95~ | |
材齢28日 | 60~ | 75~ | 95~ | 105~ | |
材齢91日 | 80~ | 95~ | |||
フロー値比(%) | 95~ | 95~ | 90~ | 85~ | |
酸化マグネシウム(%) | 10.0以下 | ||||
三酸化硫黄(%) | 4.0以下 | ||||
強熱減量(%) | 3.0以下 | ||||
塩化物イオン(%) | 0.02以下 |
※活性度指数とは、高炉スラグ微粉末の強度発現性能の評価指標です。
普通ポルトランドセメントを使用した基準モルタルに対して、普通ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末を質量比1:1に混合したモルタルの圧縮強度比で表します。
特徴
温度ひび割れの低減
粉末度が大きい高炉スラグ微粉末を使用し、かつ置換率を大きくした場合には温度ひび割れを低減する効果が期待できます。
ただし、粉末度が高いことで高炉スラグ微粉末添加前のコンクリートよりも水和熱が大きくなる可能性があるため注意が必要です。
アルカリシリカ反応の抑制
高炉スラグ微粉末を添加することで化学的抵抗性が向上し、海水や硫酸塩に対する抵抗性、アルカリシリカ反応の抑制効果が得られます。
一方で、高炉スラグ微粉末を添加するとコンクリートが全体的に中性側に寄ってしまい、中性化を促進させる恐れがあります。
長期強度の増大
十分な湿潤養生を前提として、長期強度の増大が期待できます。
潜在水硬性
高炉スラグ微粉末は水和反応を伴わない潜在水硬性により強度を実現するため、水分使用による乾燥に伴う収縮量は通常よりも小さく低減することが可能です。
ただし、スラグの粉末度が大きい場合には、自己収縮量や温度応力に伴うひび割れが増大してしまう恐れがあります。
また、潜在水硬性によりコンクリートを緻密化するため、塩化物イオンの浸透等の化学的抵抗性が向上します。
しかし、潜在水硬性はアルカリ環境下でのみ優位に発揮されるものであり、十分な塩基度を有していることが条件です。
そのため高炉スラグ微粉末の塩基度の下限値を1.6と規定されています。