混和剤とは、コンクリートを低水セメント比で必要強度を確保したり、空気を連行してワーカビリティを確保したりする効果を付加するものです。
混和剤には主に減水剤・AE剤・流動化剤があり、減水剤・AE剤に対しては「高性能〇〇」という上位版が存在します。
※そのほかの混和剤についても詳細後述。
品質規定としてコンクリート試験による性能品質および塩化物イオン量や全アルカリ量(\(0.30kg/m^3\)以下)等があります。
種類
減水剤・AE剤は凝結時間の差によって標準形・促進形・遅延形に区分され、高性能AE減水剤・流動化剤については標準形と遅延形に区分されます。
さらに塩化物イオン量によってⅠ~Ⅲ種に区分されます。
種類 | 塩化物イオン量 |
---|---|
Ⅰ種 | 0.02kg/m3以下 |
Ⅱ種 | 0.02~0.20kg/m3以下 |
Ⅲ種 | 0.20~0.60kg/m3以下 |
AE剤
AE剤とは、コンクリート中に微細な空気泡(エントレインドエア)を一様に連行し、ワーカビリティや耐凍害性を向上させる目的で使用する界面活性剤のことです。
ボールベアリング効果
シリカフュームのような微細な球状である連行空気がボールベアリング効果を発揮し、所要のワーカビリティを発揮するために必要な単位水量を低減することが可能です。
耐凍害性の向上
コンクリート中の連行空気は、凍結作用が働いた時の水粒子の膨張圧を吸収し、自由水の移動を可能とし、凍結融解の繰り返し作用に対する抵抗性を著しく増大させます。
凍結融解抵抗性は空気泡の気泡間隔距離が小さいほど効果が大きくなります。
AE剤によって連行される空気泡の直径は約30~250μmとされています。
細骨材率の調整が必要
細骨材率が増加するほど空気量も増加します。
AE剤を使用するとき、細骨材のうち0.3~0.6mmの分布が多いと空気は連行されやすく、0.15mm以下が多いと連行空気量は少なくなりますので、AE剤を使用する場合には細骨材の粒度分布の調整に注意が必要です。
空気量特性
AE剤を使用する際の注意点として、目標空気量の設定があります。
コンクリートの圧縮強度は空気量に反比例して低下し、空気量約1%の増加に対してセメント量一定の場合は2~3%、水セメント比一定の場合は4~6%程度だけ材齢28日圧縮強度が低下します。
また、コンクリートの練上り温度が低いほど空気量が増加し、硬練りよりも軟練りコンクリートの方が空気量が多くなる性質にも注意して目標空気量を設定します。
フライアッシュとの相性が悪い
フライアッシュ中の未燃カーボン(=未燃炭素)はAE剤を吸着する性質があり、AE剤添加による連行空気量が少なくなります。
フライアッシュを併用する場合にはその相性に注意しましょう。
ただし、近年はフライアッシュ用AE剤が普及しており、フライアッシュと併用する際にも安定して空気を連行することが可能です。
スラッジ固形分が多いと効果薄い
水に回収水を使用する場合には、回収水中のスラッジ固形分が多くなると、多量のAE剤が必要になります。
減水剤
減水剤とは、セメント粒子に静電気的な反発作用を付加して粒子を分散させ、セメントペーストの流動性を向上させる混和剤です。
減水剤は、所要のコンシステンシー・強度を得るための必要な単位水量と単位セメント量を減少させることができます。
単位水量の減少
所要のコンシステンシーを得るための必要単位水量について4~6%減少させることが可能です。
遅延形はコンクリートの凝結を遅延さえ、夏季に使用されます。
促進形はコンクリートの凝結促進効果よりも初期強度の発現促進に特徴があります。また、低温時における初期強度の発現や型枠存置期間の短縮としても利用されています。
AE減水剤
AE減水剤も同様に減水剤系の混和剤で、セメントに静電気的性質を付加します。
AE減水剤は、減水剤特有のセメント分散作用と、AE剤特有の空気連行性を併有しており、
空気泡の連行、単位水量の減少、セメントの水和率増大が期待できます。
単位水量の減少
所要のコンシステンシーを得るための必要単位水量についてAE減水剤で12~16%減少させることが可能です。
遅延形・促進形の使い分け
遅延形はコンクリートの凝結を遅延さえ、夏季に使用されます。
促進形はコンクリートの凝結促進効果よりも初期強度の発現促進に特徴があります。また、低温時における初期強度の発現や型枠存置期間の短縮としても利用されています。
最新型AE減水剤の開発
最新といってもここ10年くらいの単位の話ですが、ブリーディング低減を目的とした増粘性のあるAE減水剤が開発、使用されています。
高性能減水剤
高性能減水剤とは、減水剤の上位版となる混和剤で、「コンシステンシーに影響することなく単位水量を大幅に減少させるか、または単位水量に影響することなくスランプを大幅に増加させる化学混和剤」と定義されています。
減水率は通常の減水剤が4~6%であるのに対し、およそ20~30%程度と大きな減水効果が得られます。(基準的には減水剤が4%以上、高性能減水剤で12%以上と規定されています。)
多量に使用しても凝結や空気量を変動させず、高強度コンクリートの製造に貢献しています。
減水性や流動性は、セメント量が多いほど大きく発揮されます。
高性能AE減水剤
高性能AE剤とは、AE剤の上位版となる混和剤で、高い減水性能とスランプ保持性能を有し、適度な空気連行性を付加します。
ポリカルボン酸系、ナフタレン系、アミのスルホン酸系、メラミン系の4種類に区分されます。
高性能減水剤と同様に、セメント量が多いほど減水性・流動性改善効果が大きくなります。
通常のコンクリートから高強度コンクリートまで幅広く使用される混和剤です。
流動化剤
流動化剤とは、工場で錬上り、運搬されてきたベースコンクリートに、現場で付加するタイプの混和剤です。
高性能減水剤が主成分であり、コンクリートの流動性を改善し、ワーカビリティを確保する効果があります。
ただし、混和剤との相性に注意が必要で、添加後にこわばりを生じてしまう可能性があります。
また、添加後スランプが大幅に向上しますが、添加後30分経過した以降に急速にスランプが低下するため、添加後20~30分以内の迅速な打設が求められます。
流動化剤を添加したコンクリートは流動化コンクリートと呼ばれ、別途特徴および使用方法を確認しましょう。
凝結遅延剤
凝結遅延剤とは、JIS A 6204に規定された化学混和剤で、AE減水剤よりも凝結遅延させる効果があります。
減水剤・遅延形に分類され、AE減水剤の遅延形よりも遅延性能が大きく、暑中コンクリートにおけるコールドジョイントの防止やスランプ低下抑制対策を必要とするコンクリートに用いられます。
また、付着モルタル安定剤として、アジテータ車に付着したモルタルの再利用のために使用されることもあります。
硬化促進剤
硬化促進剤とは、寒中コンクリートにおけるコンクリートの初期強度発現を促進させる効果があり、2006年にJIS A 6204に制定されました。
耐寒促進剤
耐寒促進剤とは、北海道・東北地方以北の寒冷地で使用される混和剤で、JIS A 6204に規定されている促進形のAE減水剤です。
急結剤
急結剤とは、セメントの凝結時間を大きく短縮し、超早期の強度発現を促進する混和剤です。
NATM工法や土留め壁の吹き付けコンクリート、および止水工法に使用されます。
瞬結性能に長けており、数十分単位の超早期の強度発現に寄与します。
気泡剤
気泡剤とは、AE剤と同様に界面活性作用により空気を連行する混和剤で、ミックスフォーム式・プレフォーム式があります。
発泡剤
発泡剤とは、化学反応によるガス発生により空気泡を連行する混和剤で、アルミニウム粉末が使用されています。
ALC製品やプレパックドコンクリート、PCグラウトに使用されます。
収縮低減剤
収縮低減剤とは、セメント硬化体中の毛細管空隙中の水の表面張力を低下させて、水の逸散に伴う毛細管張力を低減する効果を有する混和剤です。
毛細管張力を低減することでコンクリートの乾燥収縮および自己収縮を低減することが可能です。
添加量に比例して収縮低減効果が増加しますが、一方で空気量の適切な調整を行う必要があります。
使用量が過大になると凝結遅延や強度の低下の危険があります。
鉄筋コンクリート用防錆剤
鉄筋コンクリート用防錆剤とは、コンクリート中の鉄筋が塩化物によって腐食するのを抑制する効果がある混和剤です。
分離低減剤
分離低減剤とは、一般に増粘剤と呼ばれるもので、コンクリートの材料分離抵抗性を向上させる混和剤で、増粘剤系高流動コンクリートや水中不分離性コンクリートに使用されます。
分離低減剤には粉体系と液体系の2種類あり、粉体量を増して材料分離抵抗を向上させるなどの使い分けをします。